北海道の歴史・開拓の人と物語

北海道開拓倶楽部

令和3年度全国学力テスト・意識調査が示す北海道の未来

父祖の歴史をおざなりにした「未来指向」のもたらすもの

 
衆議院選挙たけなわの今日は現代の話をします。政治家のみなさん、有権者のみなさんに北海道の現実を知ってほしいからです。
 
【北海道開拓倶楽部】では、かねてより国立教育政策研究所が毎年実施する「全国学力・学習状況調査」、すなわち「全国学力テスト」に注目しています。といっても当方が注目しているのは道テストで実施する国数のテストの成績ではありません。同時に行われる小学生、中学生の意識調査です。この調査は、公立私立を問わず、すべての児童・生徒を対象に行われるもので、アンケート調査としては最大最強だからです。
 

 
当方は北海道開拓者精神の復興を願うものですが、その大きな理由に北海道の未来を担う子どもたちの教育の問題があります。郷土の歴史、父祖の歴史を子どもたちに誇り高く伝えることは、その子の自己肯定感、社会的責任意識を育てるのとても大切なことだと思っています。そして郷土愛は、その子が成長したとき、地域の担い手になりたいという意識を育み、ひいては地域を衰退から救うのです。
 
ところが、本サイトで再三お伝えているように北海道は父祖の歴史の継承=郷土愛の涵養という政策をおざなりにしています。その典型が北海道百年記念塔解体を決めた道の議論です。解体決定のプロセスつぶさに見て見いますが、道の発言にこの塔が北海道を築いた父祖へのリスペクトの象徴という視点がまったくありません。あるのはただただ「今だけ、金だけ、自分だけ」という視点です。
 
北海道のこうした姿勢は当然のこととして子どもたちにも影響を与えないわけがありません。「未来指向」ばかりを強調して、父祖への感謝、歴史へのリスペクトはまったくおざなりにしているのが今の北海道です。そうした北海道のあり方が、子どもたちにどのような影響を与えているのでしょうか? 
 
このテストは、昭和31(1956)年から毎年行われていますが、令和2年の調査はコロナ禍で中止となり、2年ぶりに行われた令和3(2021)年度の調査の結果が8月31日に公表されました。この調査から北海道の中学生の意識を見ましょう。毎年質問項目は変わりますが、中には同じ質問もあります。開拓が完全に排斥された「北海道150年事業」が行われる前の平成27(2015)年度調査と比較していきます。
 
 

◎自分には、よいところがあると思いますか?

 

 
自己肯定感を問う設問です。「当てはまる」と答えたが子供は33.8ポイントで、全国平均よりも0.7ポイント下。「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」のポジティブな回答の合計は全国よりも1.7%も下です。
 
平成27(2015)年度と比べると、ポジティブの割合の合計は平成27年と変わらないマイナス1.7%ですが、「当てはまる」の割合が6年前よりも下がっています。そしてネガティブな回答の割合は増加しています。
 
自分肯定感を持てない子供の割合が北海道は全国よりも多く、そして増えているのです。
 
 

◎将来の夢や目標をもっていますか?

 

 
自己肯定感がもてないと、将来の自分に希望を持つことができません。コロナ禍を反映してか、全国的にもナガティブナな回答の割合が高まっていますが、北海道の子どもたちは全国よりの子どもたちよりも将来に悲観的です。実際に北海道の子どもたちは将来に対してポジティブな割合は全国よりも1.3ポイント低く、しかも6年前よりも悪化しています。
 
 

◎難しいことでも、失敗を恐れないで挑戦していますか?

 

 

私たちの父祖は、北海道の開拓者です。身一つで原生林に分け入ってあらゆる困難を乗りこえて、私たちにこの北海道を残しました。そうした開拓者の子孫であるならば、「難しいことでも、失敗を恐れないで挑戦していますか」という設問こそ、全国を上回りたいものです。
 
ところが、結果はポジティブの割合は全国よりも3.3ポイント低く、しかも平成27(2015)年よりも大きく悪化しています。自己肯定感が薄く、将来に希望の薄い子どもたちならば、必然の結果かもしれませんが、道を挙げて「開拓」の歴史を排斥する風潮がある現実を思う時、この結果に強い憤りを持つのは私だけでしょうか。
 

◎地域や社会をよくするために何をすべきかを考えることがありますか?

 

 
この項目も全国よりも大きく劣り、しかも平成27(2015)年よりも悪化しています。北海道の子どもたちには「今だけ、金だけ、自分だけ」という残念な意識がどこよりも浸透しているように思います。この結果を見て、北海道における地域からの若年層の人口流出はさらに加速するだろうと思いました。
 

 
総じて令和3年度全国学力テスト・意識調査が示す北海道の子どもたちの自己意識・社会意識は全国よりも貧しく、さらに6年間で大きく後退しています。この厳しい現実に誰が向き合い、誰が責任を取るのでしょうか?
 
こうした現実を見るとき、北海道150年が、「未来指向」という言葉で開拓の歴史から目を背け、父祖の歴史、先人の遺徳に対して思いを寄せる機会を奪ってしまったことは悔やんでも悔やみ切れません。
 
歴史を失うものは未来を失う──といいますが、北海道百年記念塔に見られる北海道の大人達の姿勢がこの残念な調査結果に表れているのではないでしょうか?
 


【データ出典】
国立教育政策研究所
令和3年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料 都道府県別 北海道
https://www.nier.go.jp/21chousakekkahoukoku/factsheet/01_hokkaido/index.html
平成27年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料 都道府県別 北海道
https://www.nier.go.jp/15chousakekkahoukoku/factsheet/prefecture/01_hokkaido/index.html
写真・北海道登別市立緑陽中学校公式サイトhttps://ryokuyo.mnw.jp/2016/12/blog-post_16.html

 

 
 

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