北海道の歴史・開拓の人と物語

北海道開拓倶楽部

 

よみがえる世紀の祭典「北海道百年 」


1968年 北海道百年 記念事業③ 

開道百年は北海道の誇りをつくった

空前の高まりを見せた全道のスポーツ、文化、歴史研究

 北海道百年事業は町村知事の「若い世代に開拓当初の先人の労苦を銘記させる」を理念に記念事業の思想を全道に及ぼすこと、若い世代に伝えることに傾注しました。その結果、北海道では空前とも言える郷土史ブーム、出版ブーム、北海道ブームが起こりました。また積極的にスポーツを振興したことで、スポーツ王国北海道の土台をつくりました。明治の開拓以来、基盤整備にばかりが先行していた北海道に「開道百年」は誇りと自信をあたえたのです。

 

【地方記念施設】14地方に1か所ずつ建設

大正7(1918)年の「開道五十年」は華やかではあったけれども札幌に留まるものでした。50年後の「北海道百年」では記念事業の意義を全道に及ぼすことに腐心しました。そして1支庁につき1施設、計14の記念施設を建設することにしました。青少年の利用を年頭においた施設が多いことは「若い世代に開拓当初の先人の労苦を銘記させる」という「北海道百年」の理念の表れです。
 
●〈石狩地方〉千歳市立支笏湖青少年研修センター(解体)

石狩管内の立地条件に照らして国立公園内支笏湖畔の中モーラップに青少年研修センターを設け、管内をはじめ広く道内行少年の利用に供する。

●〈渡島地万)七飯町立南北海道青少年センター(解体)
大沼国定公園の湖沼を前に、駒が岳を背景にした七飯町大沼に、研修施設と体育施設を建設する。
●〈桧山地方〉江差町立江差郷土資料館(閉館)
江差七百有余年の文化遺産を集めて地域住民の郷土知識を高め、また文化活動の拠点ともする。
●〈後志地方〉余市町立余市水産博物館

余市水産博物館(出典①)

 

余市町の市街中央部、日本海を見おろしてニシン漁全盛時代をしのぶモイレ山の上に建設、将来博物館法の適用を受けるよう充実していく計画である。
●〈空知地方〉岩見沢市立青少年センター(スポーツセンターは存続)
岩見沢市東山総合公園の中にスポーツセンターと青少年の家を建設する。
●〈上川地方〉士別市立つくも青少年の家(2019年3月末閉館)
鉄筋コンクリート造り、2階建て、延約1,703平方メートルで、収容人員150人、宿泊80人となっている。

ノシャップ寒流水族館(出典②)

●〈留萌地方〉羽幌町立屋外総合運動場 
留萌地方初めての陸上競技場で、羽幌町が計画しているスポーツ公園造成事業のひとつである。
●〈宗谷地方〉稚内市立ノシャップ寒流水族館
日本で10番めの水族館である。
●〈網走地方〉常呂町立オホーック青少年の村 (現「ネイパル北見」)

ネイパル北見(出典③)

自然の条件に恵まれ、北海道古文化の研究上にも重要な位設を占める網走国定公園さろま湖畔(常呂町栄浦)に設けられる青少年の村のうち「かき島青年の家」と呼ばれる研修センターは昭和43(1968)年に完成した。
●〈胆振地方〉苫小牧市立青少年センター (現科苫小牧市科学センター)

苫小牧史科学センター(出典④)

苫小牧地方の自然・考古・歴史・先住民族・芸術などに関する資料を通じて郷土のあゆみを示すとともに、科学知識を普及する展示物や実験・模型製作などによって青少年の科学する心と技術を育てようというもの。
●〈日高地方〉静内町立体育館・水泳別館・郷土館・図書館(体育館は存続)
体育館は4室で、バスケットボール・卓球・柔道・剣道用となっている。
●〈十勝地方〉上士幌町立ひがし大雪青少年の村(解体)
大雪山国立公園の糠平地区に、研修機関としての博物館とレクリエーション施設を総合的に整備し、十勝地方をはじめ全道の青少年の利用に供する計画である。
 ●〈釧路地方〉標茶町立青少年体育センター(解体)
塘路湖畔に建設を進めている「青年の村」の中心施設である。
 ●〈根室地方〉中標津町立青少年体育記念館(解体)
競技場・剣道場・柔道場・トレーニングコーナー・体カテストコーナーをもち、管理棟には研修室も設けられる。
 
 

【地方スポーツ大会】14地方168会場に選手2万8000人

 
地方の道民もあまねく「北海道百年」に参加できる方策として「地方スポーツ大会」が実施されました。各地で予選を行って札幌で決勝大会を行うという素案でしたが、それでは結局札幌の一極集中になるとして、各地で完結する大会として行われました。スポーツ大会らしい大会が始めておこなわれる地方も多く、道民のスポーツ熱を大いに高めました。
 
北海道百年を機会に道民の間にスポーツを菩及し、スポーツをとおして道民の連帯感の高揚と1本力の向上を図ろうとするスポーツ大会は、全道14地方ごとの大会を行なうことにした。道と道教育委員会が共催し、各支庁長を会長とする実行委員会が管内市町村・スポーツ団体ほか関係機関・団体の協力を得て運常にあたった。

 

胆振地方スポーツ大会開会式(出典④)

競技種目は、原則として陸上·バレーボール・卓球・柔道・剣道・すもう・バスケットボールル・軟式庭球・軟式野球・ソフトボール・バドミントン・弓道の12種目の中から各地方の実情に応じて6種目以上を選び、各市町村大会(予選)をへて種目別および総合の市町村対抗競技を行なうことにした。
 
昭和43(1968)年6月30日の函館市千代が岱陸上競技場における渡島地方大会を皮切りに8月下句まで、14地方延168会場で選手総数約2万8,000人が出場して開催された。このような総合スポーツ大会は初めてという地方も多く、全道的に非常な反響を呼んで、今後毎年継続開催を望む声が強い。
 

【中堅青年の海外派遣】アメリカに130人1カ月

 これからの北海道を担う若い世代を育てることが「北海道百年」の一貫したテーマでした。このため次代を担う世代をアメリカに派遣し、国際感覚と開拓者精神を再確認してもらう派遣事業が大規模に行われました。
 
昭和43(1968)年7月30日、北海道中堅青年海外派遣団(杉野目晴貞団長)130人が千歳空港から羽田経由の日本航空ジェット機でアメリカヘ飛び立ち、約1か月間の研修旅行の途についた。
 

千歳空港を出発する派遣団(出典⑤)


北海道青少年育成推進協議会(杉野目晴貞会長)が百年を記念し、北海道2世紀をになう全道中堅青年とその指導者を本道開柘にゆかり深いアメリカヘ送って、開拓者精神の涵養、世界的視野の確立、青少年活動の交換、国際親善の推進を目標に研修させ、各地域における開発推進の中核的人材を養成しようという企画である。
 
これに対し、道をはじめ道教育委員会・道誓察本部・道市長会・道町村会・各報道機関も積極的に協力。42年11月に同協議会加盟135団体と各機関から推薦された274人の青年のうちから105人(うち女子19人)を選抜した。指導者は、同協議会加盟団体関係10人、道・市町村関係11人が選ばれた。
 
 

【郷土史研究の促進】空前の郷土史研究ブームと郷土館の建設

 
「北海道百年」の最大の意義は、道民に北海道の歴史に対する誇りと自信を与えたことです。道内の各地で郷土史研究会が起ち上がり、郷土館や資料館の建設、市町村史の編さんが活発に行われました。こうした歴史に対する学びをとおして道民は北海道人であることに誇りを高めていきました。
 

郷土館の建設補助

道教育庁が行なった開拓記念物などの調査・保存指導と対応して、市町村や町内会・部落会においても地元開拓遺産の保存活動が盛り上がった。
 
道は、市町村による郷土館などの設置を促進するため、約165平方メートル以上の木造建て物の建設に各100万円を、同じく耐火構追施設の建設には各200万円を補助することとし、39年度から設置を進めた。43年度までに設置をみた公立施設は次の10館である。
 
◎39年度 京極町郷土館
◎40年度 常呂町郷土館・伊達町有珠郷土館
◎41年度 厚岸町郷土館・様似町郷土館
◎42年度 紋別市郷土博物館・尻岸内町郷土館
◎43年度 上ノ国町郷土館・浦蜆町郷土館・富良野町郷土館
 

2年間に300点を超える郷土史出版点数

開拓記念物の保存先人の像の建立など郷土史研究の豊かな結実、後世への貴重な遺産、北海道百年を契機として、道内にかつてない郷土史刊行ブームがおこった。
 
道立図書館が昭和41(1966)年後半から43年前半にかけて集めた郷土史関係刊行物だけでも約250点を数え、目録類や考古資料などを含めると300点をこえるものとみられている。
 

記念館や郷土室、開拓遺産保存活動盛んに

道が助成した市町村郷土館のほか、市町村や町内会・部落会が独自に設けた開拓記念物保存施設として次の例が見られる。
 

北海道百年で整備された
新琴似中隊本部(出典⑦)


屯田兵屋とその遺品などを保存するものには、琴似屯田記念館=道文化財=(札幌市琴似屯田保存会)と新琴似屯田兵中隊本部(札幌市新琴似自治会)があり、江部乙町が設けた屯田記念館は兵屋ではないが、道内唯一という貴重な資料を保存し、深川市は納内支所に屯田兵遺族の団体が寄贈した遺品を保存する郷土資料陳列棚を設け、上湧別町では屯田兵官給品などを中心とする開拓記念館を設置した。
 
札幌市では、時計台を札幌農学校の兵式体操の場であった当時の演武場の原形に復元改修し、札幌100年の歴史的写真や記念物を展示した。
 
旭川市は旧偕行社を復元改修して郷土博物館とし、瀬棚町では萩野吟子資料室を設置した。 ほかに上ノ国町郷土館、白老町民族資料館(そばにアイヌコタンを移転)、富良野市郷土館、八雲町公民館郷土室などが見られる。
 
また、平取町二風谷に開設された北海道大学北方文化研究所は、同部落でアイヌの病気治療に終生献身したスコットランド出身のマンロー博士の住宅をイギリス大使館員と町民が協力して復元、博士の遺品共北大に寄贈したもの。
 
月形町民の開拓記念物保存会は、明治20(1887)年代までの開拓に寄与した樺戸集治監(刑務所)=現月形町役場庁舎=に関する資料を全道から収集する一方、開拓の犠牲となった囚人たちの慰霊に努めている。
 
北海道酪農発祥の地である札幌市真駒内中央公園に先年エドウィン=ダンの像と記念館を建てたダン顕彰会(町村敬貴理事長)は、昭和43(1968)年10月に行なったダン感謝祭を機として彼に関する資料・農機具・写真・油絵などを収集あるいは制作して保存、展示し、ダンの開拓者精神を青少年に伝えようとする事業計画に著手、44年5月ころから公開される予定になっている。

 

道内市町村[開道百年」関連事業一覧

下記表は、道内各市町村が「北海道百年」にどのように取り組んだのか、北海道百年記念事業事務局『市町村が昭和43年に実施する記念事業・行事調べ』を資料に独自に作成したものです。多くの市町村で記念式典、祝賀イベントが行われたほか、市町村史の編さんやスポーツ大会の実施があったことがわかります。道にあわせて市町村のエンブレムや顕彰を制定したまちも多数ありました。北海道百年──それは北海道の市町村が永続的なコミュニティとして確立したこと示すものでした。

 

 

【引用出典】
[1]北海道百年記念施設建設事務所編『北海道百年事業の記録』1969・北海道・83-86p
[2]北海道百年記念施設建設事務所編『北海道百年事業の記録』1969・北海道・112-113p
[3]北海道百年記念施設建設事務所編『北海道百年事業の記録』1969・北海道・140p
[4]北海道百年記念施設建設事務所編『北海道百年事業の記録』1969・北海道・95p
[5]北海道百年記念施設建設事務所編『北海道百年事業の記録』1969・北海道・147p
[6]北海道百年記念施設建設事務所編『北海道百年事業の記録』1969・北海道・147p
 
【図表出典】
①北海道文化資源データベース https://www.northerncross.co.jp/bunkashigen/parts/811.html
② フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』https://ja.wikipedia.org/wiki/
③北海道北見市「食&観光」ガイド オフィシャルWEBサイト>
スポット > 北海道立青少年体験活動支援施設ネイパル北見  http://kitami-mylove.jp/spot/lodging/1660.html
④全国科学館連携協議会公式サイト>加盟館の一覧 北海道 苫小牧市科学センター http://jasma.sc/modules/member_basic/index.php?lid=174&cid=1
⑤北海道百年記念施設建設事務所編『北海道百年事業の記録』1969・北海道・145p
⑥北海道百年記念施設建設事務所編『北海道百年事業の記録』1969・北海道・141p
⑦札幌市公式サイト>市政情報 > 都市計画 > 景観 > 景観資源の保全・活用 > 札幌の歴史的建造物を旅する「れきけん×ぽろたび」 > No.5ひろがる札幌郊外の産業 > 新琴似屯田兵中隊本部 https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/rekiken/buildings/building38.html
⑧北海道立図書館[北海道百年記念資料]北海道百年記念事業事務局『市町村が昭和43年に実施する記念事業・行事調べ』

 

 

 

 
 

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