北海道の歴史・開拓の人と物語

北海道開拓倶楽部

【終戦特集】

昭和17年12月 戦争生活実践要綱

 
8月15日が近づいてきました。いつもは明治大正の開拓時代を取り上げていますが、終戦特集として太平洋戦争にちなんだ話題をお届けします。今回紹介するのは『旭川市史 第二巻』(1969)掲載の「戦争生活実践要綱」です。これは町内会を通して住民に配布された戦時生活の心得です。
 
 「贅沢は敵だ」「欲しがりません勝つまでは」などのスローガンで知られる国民精神総動員運動の一環です。この国民精神総動員運動はとかく極端な自己犠牲の精神が強調されますが、その全文を読むと環境問題に配慮しなければならない現代にも通じるものがあります。
 
また現在ロシアとウクライナの間で戦争が行われていますが、当事者となっているウクライナ国民の置かれている状況を理解するためにも役立つでしょう。
 
本サイトは決して戦争を賛美するものではありませんし、一つの考え方を押し付けるものではありません。しかし、ここに示されている実践項目を昭和の10年代にほとんどの日本人が遵守し、いわゆる日本人らしさとして戦後にも受け継がれたことを想えば、良い悪いの議論の前に後世になってついばまれた一部を見るのでは無く、全体を見ることは意義のあることと想います。
 
受け止め方は各人それぞれと思いますが、下記に「戦争生活実践要綱」の全文を掲載します。
 

小樽駅前での出征兵士の見送り

 

戦争生活実践要綱
 
われわれは大東亜永遠の平和を確立するため、今や国難を睹して戦いつつあることをしつかりと自覚し、今こそ忠誠奉公和協一心、堅忍持久の戦場精神を昂揚し、質実剛健にして明朗なる戦争生活を実践し、国民皆働その総力を拳げて生産の増強を期し、もって聖戦を勝ち抜かねばならぬ。ここに最も身近なる戦争生活実践要項を掲げ、挙国一致之が徹底的実行を期せんとするものである。
 
一、皇恩に感謝し、戦争必勝のため毎朝神前及祖先の霊位に礼拝すること。
 
二、一家揃って早く起き、窓や戸を開け放して新鮮な空気を入れ、元気よく運動すること。
 
三、衣食住をはじめ一切の生活は努めて質素にし、すべて生活上絶対必要なる最少限度に止めること。
 
四、食物については左の事項を実行すること。
⑴ 郷土より産する手近かなものを数多く混ぜて食べること。
⑵ 食物はよく噛み、野菜の皮や魚り骨などでも栄養のあるものは全部食べるやうにすること。
⑶ 食前には「戴きます」、食後には「御馳走さま」と感謝の言葉を捧げ、行儀よく食べること。
 
五、衣服等については左の事柄を実行すること。
⑴ 衣服は有るもので間に合せ、やむを得ざるものの外は新調しないこと。
⑵ 衣服は体裁よりも実用を重んじ、活動に便利にしてかつ健康に適するものとすること。
⑶ 婦人の衣服は筒袖(舟底型)センベ式又は標準服に更生すること。
⑷ 衣服夜具類は努めて日光に曝すこと。
 
六、住居については左の事項を実行すこと。
⑴ 換気及保温に注意し、特に居間は日当りよき部屋を充てること。
⑵ 住居の内外は常に清潔にし、かつ掃除の際には必ず窓や戸を開けること。
 
七、婚礼、葬儀、贈答その他すぺての儀礼や交際は華美または虚礼を絶対に廃し、質素にしてしかも心の籠もったものとすること。
 
八、貯蓄は戦時下における国民の義務なるをもって各人の収入より先づ最大限度の天引貯金をなし、その残りで生活するよう工夫すること。
 
九、戦時下におけるお互いの生活を健全明朗にするため左り事柄を実行すること。
⑴ お互に思ひやりと親切とを第一とし、何事にも有難うと感謝し、不平や非難を慎むこと。
⑵ 何事も自分本位の考えを捨て、特に買漁りや買溜めは対にしないこと。
⑶ 大いに隣組精神を発揮し、お互に助け合い、譲り合いの生活をすること。
⑷ 時間を励行し、規律を厳守し、特に団体の場合には指揮者の命に従い整然と行動すること。
 
十、鉄道による旅行または荷物の輪送はできるだけ見合せること。おおむね二㌔以内は必ず歩くこと。

 

 
 


【引用参照文献】
『旭川市史 第二巻』(1969)

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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