北海道の歴史・開拓の人と物語

北海道開拓倶楽部

札幌で最初の自動車!?

 

私の本業は主に社史などを書くライターです。守秘義務的にどの会社かは言えませんが、今、ある自動車関係の会社の社史の原稿を書いています。
北海道の自動車業界の歴史を調べている中で、以前「開道50年記念北海道大博覧会」を紹介したときに掲載した写真がとても興味深いことがわかりました。今展開している事とあまり関わりはありませんが、コーヒーブレークとして紹介します。
 

 

 
写真には中島公園で開かれた博覧会場正門前に止まっている1台の自動車が写っています。この自動車、札幌を初めて走った営業自動車である可能性が高いのです。自動車の個人所有は考えられない時代でしたから、札幌に常置された最初の1台であるかもしれません。
 
日本で最初に自動車が走ったのは明治31(1898)年1月頃、フランス製の自動車が東京の築地上野間を走ったのが最初だそうです。北海道では大正3(1914)年、函館の函館船渠会社が蒸気自動車を自家用に買ったのが最初とされています。
 
北海道最初のタクシーは大正4(1915)年4月、函館の磯貝自動車店の磯貝吉次郎が北海道では初めて自動車運転免許証を取得し、函館駅周辺で営業を始めたのが最初です。当時の運賃は函館駅から湯川までが5円でした。
 
一方、根室では、函館の磯谷自動車よりも1年早く、大津長三郎がフォードの8人乗り自動車を3700円で購入し、根室ー厚岸間の輸送に使いました。当時鉄道は根室まで到達しておらず、大津はこのことに着目して事業を始めました。
 
しかし、当時の粗悪な道路に耐えられず故障が頻発、ガソリンやタイヤの消費の激しさもあって運行不能になることが多く、営業は困難を極め、1年半で約7500円の損失を生じ、営業廃止となりました。
 
さらに釧路では大正4(1915)年7月、人力車を経営していた小川裕次郎が横浜からフォード製の8人乗り中古自動車を購入してハイヤー営業始めました。しかし、このために小川は人力車組合から除名され、商売も自動車が故障続きで満足に営業ができず、運転手にも裏切られ、あえなく廃業にいたりました。
 
このように北海道では雪の少ない太平洋沿岸で営業運転が始まっていたものの、いずれも短期間で失敗。冬が長く、道路も粗悪な北海道で自動車による営業は無理と思われていました。
 
そうした道民の意識を変えたのが大正7(1918)年の北海道大博覧会でした。『北海道自動車年鑑』(1954)は次のように語っています。
 

大正7(1918)年の夏には札幌市において北海タイムス新聞社主催の北海道大博覧会に、東京から菊川タクシーが進出してきて会場を中心に自動車営業を行ったことが識者を刺激して、ようやく道内主要都市のタクシー営業は活発となり、また主要都市を中心とするバス型自動車を使用したバス営業がこの年から本格的に開始されるようになり、さらにトラックによる運送営業もこの年に開始されるに至った。

 
この写真に写る自動車こそ菊川タクシーと思われます。この自動車の出現によって、北海道のタクシー事業が盛んになり、バス事業やトラック運送事業が始まったことを思えば、この写真に映る自動車は札幌における自動車の事実上の第1号と言っても良いでしょう。
 
大正7(1918)年の北海道大博覧会はこのように北海道の産業経済に大きく貢献しましたが、この前の「北海道150年」は一体なんだったんでしょうか? そう考えれば今連載中の事と全く無関係でもありません。
 


 
【引用出典】
[1]『北海道自動車年鑑1954』・1954・北海道自動車年鑑刊行委員会
①「開道五十年記念北海道写真帖」1918・開道五十年記念北海道博覧会協賛会

  • [%new:New%][%title%] [%article_date_notime_wa%]

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 当サイトの情報は北海道開拓史から「気づき」「話題」を提供するものであって、学術的史実を提示するものではありません。情報の正確性及び完全性を保証するものではなく、当サイトの情報により発生したあらゆる損害に関して一切の責任を負いません。また当サイトに掲載する内容の全部又は一部を告知なしに変更する場合があります。